歯周病が死を招く!?歯周病の予防は全身疾患の予防でもある!

生活習慣病の症状、予防方法、治療方法、データを知り、生活習慣病と向き合いましょう!
    

歯周病がもたらす悪影響の範囲は広い!

歯周病は、歯を支える歯肉や歯槽といった重要パーツの損傷が起こる生活習慣病です。したがって、歯周病にかかり、これが悪化すれば当然歯を失うことになります。しかし実は、歯周病のほんとうの怖さはそこからさらに先にあるといっても過言ではありません。しかも、歯周病の影響が及ぶ範囲は非常に広いと考える必要があるのです。

実際歯周病にかかって治療をしなければならない段階では、あまり先のことまで考えず、目の前の歯周病の進行をとにかく食い止めることが重要になります。その意味では、歯周病のほんとうの怖さを知るのは、実際に歯周病を発症する前の段階であることが望ましいといえます。

ここからいろいろな歯周病による弊害についてお話していきます。歯周病をすでに発症している患者さんに対しては、脅かすような内容になってしまうかもしれませんが、その分しっかり治療をしていただきたいと思います。また、現在歯周病を発症していない人は、歯周病の予防への意識をさらに高めていただきたいと思います。

歯を失う怖さについて

歯周病といえば、やはり真っ先に歯を失うおそれがある生活習慣病というイメージが湧くと思います。歯を失う怖さというのは、理屈ではなく、本能的な怖さでしょう。何しろトカゲのしっぽとちがって、永久歯の場合一度失ったら再生することができないのが歯の宿命です。もちろん義歯を採用するという方法はありますが、お金も時間も精神的、そして肉体的な不安や苦痛も伴うことになります。

歯を失うこと自体の怖さ

歯を失うことによっていろいろな問題が生じます。歯は食べ物を小さくしたり咀嚼したりするための重要なツールです。その一部が欠けることによって、噛むこと自体に問題が生じることになります。頬の裏側や舌を噛んでしまうといった事故が起こりやすくなるのです。また、本来あるべきものがなくなってしまうという不安感も非常に大きく、精神面でも大きなマイナスが生じます。

失う歯の箇所によっては、外見上の問題をきたす可能性もあります。歯を失ってしまったことで、口元にしわが表れる、もしくは表情が別人のようになってしまうなどの問題が生じます。加えてなめらかなことばの伝達ができなくなるといった弊害も生じやすくなります。

歯を失うことで広がる生活習慣病への懸念

歯の噛み合わせと全身疾患の関係は密接です。本来であれば、あるべき歯がすべてそろって理想的な噛み合わせが可能になります。しかし必要なパーツが欠け、噛み合わせのバランスが崩れると、その影響はジリジリと全身に及ぶようになります。まずは他の歯にかかる負荷が大きくなるため、歯の寿命が短くなるリスクをはらみます。

噛み合わせの不具合がもたらす悪影響は、他の歯への負荷の増大ばかりではありません。頬や顎のトラブルや口腔異常、(全身の)整形外科疾患、皮膚疾患、精神疾患にまでそのリスクが伝播する可能性があります。噛み合わせのバランスが悪くなることで、まずは顎関節症をはじめとする顎のトラブルが起こり、それが上記の全身疾患へと発展してしまうという症例が多いです。

歯を失わなくても歯周病は怖い!

歯周病の最大の原因は、歯周病菌と呼ばれる細菌類です。口の中には数多くの雑菌が常駐しており、この雑菌が食べかすなどをエサとして歯と歯肉の間の歯周ポケットに入り込み、増殖することで歯周病を発症するケースが多いです。歯周ポケット内部および周辺で増殖した雑菌は、特に歯周病菌と呼ばれます。

歯周病菌の影響は、歯周病を引き起こし、悪化させるだけにとどまりません。歯周病菌が何らかの理由によって全身をめぐってしまうと、場合によっては死を招くこともあるほどの重篤な疾患を発症することもあります。つまり、歯周病菌は死を誘発するリスクがある口内細菌なのです。

歯周病菌が血管内に侵入して全身をめぐることで、血管や臓器が大きなダメージを受けるリスクにさらされます。菌や細菌が血管内に侵入してくると、免疫機能が発動し、白血球などが侵入してきた細菌類に対して攻撃を仕掛けます。たいていの場合、免疫機能によって事なきを得ます。

しかし歯周病菌は元々口の中にある細菌であるということもあって、免疫機能が正常に発動しないこともあるのです。つまり血管内に歯周病菌が侵入しても、場合によっては白血球からの攻撃を免れることになってしまうのです。歯周病菌にはそういった特殊な性質があるため、どんなことがあっても血管内への侵入を許すことはできないのです。

歯周病菌が全身をめぐるメカニズム

歯周病菌が全身をめぐることで重篤な疾患を発症し、場合によっては死を招きます。これは事実です。ただ、本来なら口の中にしかいないはずの歯周病菌がなぜ全身をめぐるような不測の事態に陥るのかという明確なメカニズムは、残念ながら完全に解明されているわけでは現状ありません。

しかし考えられる可能性はいくつか指摘されていますので、ここではメカニズムとなりうるその可能性について触れてみたいと思います。

歯周病菌が歯周ポケットから血中に侵入する

歯周病菌が歯周ポケットから侵入して周辺組織を破壊すると、歯肉内部にある血管から歯周病菌が侵入し、これが全身をめぐるリスクが生まれます。つまり、イメージとしては感染症に似たイメージになります。感染症というのは、一般的には何らかの外的な要因によって菌や細菌、広義ではウイルスなどが全身をめぐることで発症する症状です。ですから、自分の口の中の歯周病菌が全身をめぐったとしても感染症と呼ばれることはありません(ただし、歯周病自体は歯周病菌による感染症であると定義されます)。

しかし呼び方はどうあれ、感染症と同等のトラブルが全身のあちこちで起こるリスクが想定されるのが、歯周病菌による全身疾患なのです。歯周病を発症して歯が抜けただけで死に至ることはありませんが、感染症によって死に至ること、あるいはそれに近いダメージを受ける可能性があることは、周知のとおりです。

歯周病菌が一般的な傷口から血中に侵入する

たとえばどこかをケガをしたときに、唾液の殺菌作用が強いという理由からか、傷口を舐めるとよいというようなことが昔から言われてきました。しかしこれだけは絶対にすべきではありません。

ひとつに、口の中にある歯周病菌が患部(傷口)から血管内に侵入するリスクが高まるという理由が考えられるからです。歯周ポケットからの侵入のリスクにくらべればそこまでリスクが大きいはけではありませんが、舐めずに患部を治療するケースよりはリスクが高まることは間違いありません。

また、歯周病とは関係ありませんが、患部を舐めることで傷口に付着しているブドウ球菌が口の中に入る可能性がありますので、切り傷などの患部を舐めることだけは絶対にすべきではありません。習慣的に患部を舐めてしまう人もいますが、これはだけは改善していただきたいと思います。

歯周病菌が気道から肺に侵入する

口が気道とつながっていることは誰もが知るところでしょう。歯周病菌が気道に入り込んで、やがて肺に到達し、肺を病んでしまうという症例も報告されています。歯周病菌は血中に侵入することが最も危険とされますが、血中に入りこまなくても気道に入り込めば肺にトラブルを生じるリスクは高まります。

想定される肺トラブルで最もリスクが高いのが肺炎です。実際、歯周病菌が原因で細菌性の肺炎を発症したという症例は少なからず報告されています。

歯周病と心臓病の関係

歯周病菌は心疾患とも関係しています。感染性心内膜炎と呼ばれる心疾患は特に歯周病菌との関係が強いと考えられています。血中に歯周病菌が侵入すると全身をめぐる可能性が高まりますが、心臓でトラブルが発生するケースは、他の臓器や血管のトラブルにくらべればそう多くありません。

ただ心臓の場合、箇所が箇所だけに、他の臓器や血管のトラブルにくらべてもより深刻な状況に陥ってしまう可能性もあります。一般的には、抜歯や治療後に感染性心内膜炎を発症しやすいといわれます。

感染性心内膜炎は、発熱や動悸などの症状を伴います。場合によっては急性心不全を発症し、死に至ることもある怖い病気です。歯科医院ではこの手のリスクにも万全に対処しているはずですが、なにしろ目に見えない細菌が相手ですから、対策は万全であっても、絶対に起こらないということと必ずしも同義ではありません。

ですから万一抜歯後、治療後に急な発熱や動悸などを覚えたら、直ちに歯科医に相談することが大切です。

歯周病と動脈硬化の関係

動脈硬化が原因で何らかの重篤な疾患を発症した患者さんの中には、動脈硬化を発症している血管が歯周病菌に感染している人がいます。この臨床データから、歯周病と動脈硬化が密接に関係しているのではないかと考えられるようになってきています。

動脈硬化が虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)、脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)の大きな原因になることがわかっています。このことから、歯周病を発症すると虚血性心疾患や脳血管疾患のリスクが高まると考えられています。

以上のように、一般的な尺度で考えても考えが及ばないくらい、歯周病菌による全身疾患の範囲が広いことがおわかりいただけたかと思います。しかし歯周病にさえならなければ、歯周病菌が原因となる全身疾患のリスクはほぼゼロに収束されるはずです。ただでさえ重篤な疾患になりやすい心疾患や脳疾患に新たなリスクを注がないためにも、まずは歯周病をしっかりと予防・治療することが重要であるということを理解していただきたいと思います。

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