糖尿病予備軍の人は、糖尿病以外の生活習慣病にも注意が必要!

生活習慣病の症状、予防方法、治療方法、データを知り、生活習慣病と向き合いましょう!
    

糖尿病予備軍とは

現在の日本は、糖尿病大国などとも言われるくらい、糖尿病の罹患者数が多いです。ただ、多いのは糖尿病にすでに罹患している患者数だけではなく、今後糖尿病を発症するリスクがより高いと考えられる、いわゆる糖尿病予備軍と呼ばれる人々も非常に多いという意味合いも糖尿病大国ということばに含んでいます。ということで、まずは糖尿病予備軍ということばについてお話していきましょう。

糖尿病予備軍とは、臨界型糖尿病とか境界型糖尿病などとも呼ばれる症状、状態で、これは、現状では糖尿病ではないものの、今後糖尿病を発症するリスクが健常者よりも高い潜在的な糖尿病への罹患リスクを抱えた状態の人を指します。糖尿病予備軍に属しているか否かを判断するひとつの基準が、やはり空腹時血糖値が大きな根拠になります。しかし血糖値というのは、あくまでもその日の体調や、その前日の食事や運動の状況によって大きくかわってくることもありますので、糖尿病予備軍の場合、HbA1c(ヘモグロビンA1c)値の上昇が、ひとつの目安になります。

空腹時血糖値がそこまで高いわけではないものの、HbA1c値が基準値を超えることがしばしばあったりすると、その患者さんはいわゆる糖尿病予備軍に属すると判断され、そのあと糖尿病に罹患しないような生活習慣をこころがけるなどの注意が必要になります。

HbA1c値が示す意味

HbA1cは、ヘモグロビンA1cと呼ばれる、ヘモグロビンに関する数値情報です。ヘモグロビンというのは、赤血球の主要な物質として酸素を身体の各細胞に運ぶ重要な役割をしています。そんなヘモグロビンA1cは、ヘモグロビンに結合している酸素についてのデータではなく、ヘモグロビンに結合している糖の割合を数値化したものなのです。

血糖値が高いということは、血中の糖濃度が高いことを意味しますので、ヘモグロビンに結合する糖濃度も必然的に高くなります。したがって、血糖値が高い人ほどHbA1c値も比例的に高くなるという傾向があります。逆に、血糖値が低ければ、HbA1c値も低くなりやすいというのが特徴になります。

このことが、実は糖尿病以外の生活習慣病、特にがんのリスクを語る上で非常に重要になってきますので、みなさんはこのことをよく覚えておいていただきたいと思います。

糖尿病予備軍にとってのリスクとは

上でもお話したとおり、やはり糖尿病予備軍である以上、健常者にくらべれば明らかに今後の糖尿病罹患リスクが高まっていることを、その時点で示しています。これは明らかで、だからこそ糖尿病予備軍などと呼ばれることになるわけですが、しかし実は、この糖尿病予備軍にとってのリスクは、その後の糖尿病だけにとどまらないのです。

もちろん糖尿病自体が生活習慣病を代表する病気であることは事実ですが、実は、糖尿病予備軍に属する患者さんのリスクは、もっと幅広い範囲で生活習慣病の罹患・発症のリスクを考慮しておく必要があるのです。しかも、近年の研究からわかってきているのが、同じ生活習慣病の中でももっとも恐ろしいといわれることが多いがんの罹患リスク、発症リスクが高まると考えられています。つまり、糖尿病予備軍と診断された患者さんは、糖尿病ではなかったとひと安心したのもつかの間、がんという生命の危険を伴う生活習慣病の足音を聞くことになるのです。

糖尿病とがんの関係は密接!

糖尿病を罹患している人のがん発症リスクは、健常者にくらべて高いと考えられています。特に、大腸がんやすい臓がん、さらに肝臓がん、女性では子宮内膜がんの発症リスクが非常に高く、健常者にくらべて1.5倍~4倍とも言われる発がんリスクがあります。4倍というのは、もはやノンスモーカーに対するスモーカーの呼吸器系がんの発症リスクにならぶだけのものがあるため、かなりの高いリスクであると考えられます。

このことについては、かなり以前から研究が進んでおり、糖尿病患者の人は情報として発がんリスクのことを知っている人は多いはずです。ですから、たとえば糖尿病予備軍をはじめ、血糖値が高い数値で推移している人は、その後糖尿病に罹患しないための努力をすることが重要であるという認識があったかと思います。

ところが、実は糖尿病患者だけではなく、糖尿病予備軍の人であっても、すでに発がんのリスクが高まっているということについても、近年の研究から明らかになってきているのです。

糖尿病予備軍の人の発がんリスクについて

糖尿病の罹患者が健常者にくらべて高い発がんリスクに見舞われているということについてはすでにお話したとおりですが、実は、糖尿病予備軍の人も発がんリスクはすでに健常者よりも高いことがわかっています。糖尿病と糖尿病予備軍では、その響き自体は似通っているものの、立場としてはやっぱりまったく別ものであると考える必要があります。しかし、糖尿病と糖尿病予備軍との共通点がないわけではありません。共通点がないどころか、非常に重要な部分で共通点があります。

それは、HbA1c(ヘモグロビンA1c)の数値が高いというところです。そして実は、糖尿病患者だけではなく糖尿病予備軍も発がんリスクが高いと考えられる最大の根拠が、このHbA1c値が高いというところにあるのです。ですから、糖尿病か糖尿病予備軍かを論じて発がんリスクなどの生活習慣病リスクを考える以前に、まずはHbA1cの値について検証していくことが大切です。

HbA1c値ごとの糖尿病もしくはその他のリスクについて

HbA1cに関しては、2013年に基準値が改定されています。その改定によれば、HbA1cの値は次のように分類されることになりました。

  • 4.6~5.9・・・正常(ただし、5.6~5.9の範囲の人は、HbA1c値が正常高値と分類され、将来糖尿病予備軍もしくは糖尿病に罹患するリスクが若干高いと考えられます)
  • 6.0~6.4・・・臨界型(境界型)糖尿病(糖尿病予備軍)
  • 6.5以上・・・糖尿病

現在減少傾向にはあるものの、上記の糖尿病予備軍に属する日本人の成人は、実に5人に1人(20%)が属していると、統計的に考えられています。糖尿病に属する人は、当然近い将来における糖尿病のリスクが非常に高く、また、5.6~5.9のHbA1c値正常高値に属する人は、直近での糖尿病罹患リスクはそこまで高くはないものの、その先の糖尿病罹患リスクに備え、何らかの対処をはじめるべき段階であると考えられます。

そして、糖尿病以外の生活習慣病に関しても、HbA1cとは大いにかかわりがあります。ここでは、その中でも特にがんについてのリスクについて検証していくことにします。

HbA1c値と発がんリスクの関係について

HbA1c値は、4.6~5.9まではいちおう正常値であると定められていますが、しかし5.6~5.9までは、現時点では正常であるものの、将来的に事態が悪化する可能性がないわけではないとも考えられており、多少の警戒が必要になっています。そこで、ここではHbA1c値が5.0~5.4である人を便宜的な基準として、それよりも高いHbA1c値の人の発がんリスクがどうであるかということについて考えることにします。

実は、ここで5.0~5.4という基準値を設けたのは、これ以外の範囲にある人は、すべてのがんの発がんリスクがこの基準の人よりも高まるということがわかっているからです。6.0~6.4の糖尿病予備軍や6.5以上の糖尿病の人はもちろん、5.6~5.9の正常高値域の人も、さらには5.0未満の人でさえ、発がんのリスクは高まるというデータが研究から得られているのです。

ただ、HbA1c値が5.0を下回る人というのは、現実的にそう多くないため、発がんリスクを云々するデータとしては、母集団が小さすぎるといわなければなりません。そこで、よりデータの信憑性を高めるために、HbA1c値が5.5以上のサンプルを対象に考えると、HbA1c値が高い人と発がんリスクが高まることがわかります。HbA1c値が高いということは、上でお話したとおり、赤血球のヘモグロビンに結合している糖の濃度が高いことを意味しています。実はこのことが、発がんリスクを高める根拠になっているのです。

HbA1c値が高いとなぜ発がんリスクが高まるのか

がんの発症リスクや発症原因はとにかく多様であるため、がんを発症した原因を特定するのは非常に難しいといえます。ただ、原因を突き詰めて、がんが発症する直前のプロセスを探ると、多くのがんで共通するファクターがあるのです。

それが、活性酸素と呼ばれる酸素の一種です。おそらく健康意識が高まっている今の時代であれば、多くの人が一度は耳にしたことがあることばであると思われます。そんな活性酸素ですが、酸素といえば、当然赤血球のヘモグロビンに結合することになります。ここで、あ・・・と思い当たる人も多いと思います。というのも、今回テーマにしてきたHbA1cは、ヘモグロビンA1cと呼ばれるヘモグロビン情報でした。

もっと言えば、HbA1cは、ヘモグロビンに結合している糖濃度に関する情報でした。もちろんこれだけでは、HbA1cの数値が高いというだけでは、がんの発症リスクとの関係が明らかになったわけではありません。決め手となるのは、悪性新生物(がん)がつくられるときのエネルギーと大いに関係しているのです。悪性新生物がつくられるときには、非常に大きなエネルギーが必要になります。そして、がん細胞が生まれるときに必要とされるエネルギーは、私たち人間が必要とするエネルギーと同じ、糖なのです。

HbA1c値が高いとがんになりやすい理由

HbA1c値が高いと発がんリスクが高まる理由を説明するためには、いろいろな情報が必要であるため、さまざまなお話をしてきましたが、いよいよここからが結論になります。何度も繰り返しになりますが、HbA1c値が高いということは、酸素(そして活性酸素も)を運ぶヘモグロビンに、酸素だけでなく糖も高い濃度で結合していることを意味します。

活性酸素は、がん細胞をつくる際には非常に大きなきっかけになってしまう物質ですが、HbA1c値が高いと、がん細胞を生みだす際に必要となるエネルギー、すなわち糖も豊富にヘモグロビンが持っているということになります。ですから、HbA1c値が高いという時点で、がん細胞をつくるための環境がもう十分にできているということになるのです。これが、HbA1c値が高いとがんになりやすい理由になります。

HbA1c値を高くしないための方法について

HbA1c値は、空腹時血糖値と違って、飲食によってそこまで大きく数値が変わるわけではありませんが、ただ、やはり生活習慣が大きくHbA1c値の変化にかかわっていることは事実です。ですから、糖尿病やがんなどの生活習慣病のリスクを少しでも小さくするためには、生活習慣からしっかりと見直して、HbA1c値を上昇させないということが重要になってきます。

では、HbA1c値を上昇させないためにはどんな生活習慣を送る必要があるのかということですが、まず言えることは、とにかく身体を動かす機会を増やすこと、そして、できるだけ身体を動かす時間を増やすことが挙げられます。もちろん普段からしっかり運動をしている人であれば、その生活習慣を継続すればよいということになります。ただ、ふだんから慢性的な運動不足が生活習慣となっている人にとっては、やはり運動ということではなく、とにかく身体を動かす機会と時間を増やすことから始める必要があります。

忙しい現代人にとっては、運動する時間を増やすというのはそうそう簡単なことではないと思います。理想を言えば、しっかりと運動をする時間を生活習慣に組み入れること望ましいといえます。それができなければ、やはり何とかして身体を動かす機会と時間を増やすという意識を持つところからスタートする必要があるといえます。

また、すでにしっかりと運動しているにもかかわらず、HbA1c値が高い傾向にある人は、食事の面で糖質や脂質の摂取が過剰気味になっている可能性があります。また、そのあたりも質・量ともにしっかりケアしているにもかかわらず、HbA1c値が高い傾向にある人は、そもそも体質的に問題があるか、あるいは何らかの原因が考えられますので、医師に相談してみるという対処も必要になってくるといえるでしょう。

今回はヘモグロビンA1cについてお話をしてきました。今回もっとも重要なことは、糖尿病というとどうしても血糖値が気になるところではありますが、血糖値だけではなく、今回のテーマであるHbA1c値にも、ふだんの健康診断からしっかりと意識を向けること、そして、HbA1c値が高い傾向にある人は、すぐにでも対処をする必要があるということです。

HbA1c値の高い数値は、糖尿病だけでなく、がんをはじめとするいろいろな生活習慣病の原因になりうるということを、しっかりと認識しておいていただきたいと思います。

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