コレステロール値が動脈硬化とは無関係であるとする説について

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アメリカの心疾患関連有識者の驚くべき発表

悪玉コレステロールの基準超過、もしくは善玉コレステロールの不足が心疾患のリスクを高めることは、今や当たり前の知識として多くの人が共有するところであるという印象がありますが、アメリカ心臓病学会(ACC)とアメリカ心臓病協会(AHA)は、私たちの常識を根底から覆すような驚くべき発表を行いました。

2013年にACCとAHAが発表した驚くべき内容は、心血管疾患リスク低減のための生活習慣マネジメントというガイドラインに加えられた1文でした。その内容とは、次のようなものでした。

“血中コレステロールが低下する根拠に乏しい以上、心血管疾患のリスク低減の条件として、コレステロール摂取量の制限を設けない”

加えて、2015年にはACCとAHAはコレステロール摂取量に関する制限を完全撤廃したことで、いよいよ日本の厚生労働省にもこの分野のガイドラインの内容に含みを持たせる表現を用いるようになりました。ACCやAHAが発表した内容ほど衝撃的ではありませんでしたが、日本の厚生労働省も、明らかに従来のコレステロール摂取量に関する口調よりもずいぶん緩やかになっている印象は確かにあるのです。

方向転換が明確に行われているわけではない

アメリカの心臓病学会や協会がなぜこのような方向転換とも取れる発表を行ったのかについては、明確なところまでは理解が及びませんが、しかし、日本の動脈硬化学会の見解によりますと、ACCやAHA、さらには厚生労働省のコレステロール摂取量に関するガイドラインの改定に関しては、次のようにまとめることができます。

2013年、2015年の改定は、あくまでもコレステロール摂取と動脈硬化、心血管疾患発症リスクとの関係を結びつける根拠に乏しいことが理由で実施された変更であって、決してコレステロールの摂取量が動脈硬化、さらに心血管疾患の発症リスクとは無関係であるとか、あるいは食習慣改善は不要であるという意味で実施された変更ではないことを強調するものになっています。

このあたりはことばのアヤというか、誤差が生じやすい変更になってしまった感は正直ありますが、識者からすると、むしろこちらのほうが自然であるとの意見が多く、私たち一般人との間に見解の乖離が多少なりとも見られます。

ですから、私たち一般人の解釈としては、これまで同様コレステロール値への注意は引き続き払ったほうがよいと認識すべきであり、ガイドラインの文言が変化したからといって、特に意識を変える必要はないということで問題ありません。

なぜ根拠に乏しいという見解に至ったのか

識者の間でこうしたガイドラインの改定について共通認識と了解があったとしても、私たち一般人からすれば、なぜそんなことをしたの?という少々気持ちの悪い部分も少なからずあります。これまでの公表に何か重大なミステイクでもあったのかと不安な気持ちにもなる人もいるでしょう。

今回ご紹介しているのは、根拠に乏しいからガイドラインの中に明確なリスクとしてコレステロール摂取制限に関する文言を盛り込むわけにはいかないというスタンスである、ということです。では、ACCやAHAはなぜ根拠に乏しいという判断に至ったのでしょうか?これまで長きにわたってコレステロール摂取が心血管疾患の発症リスクを高めるとしてきたわけですから、いくら根拠に乏しいからといって、ある意味基軸となる文言を削除するという改定を行っているわけですから、とても大きな変化のようにも感じられます。

その理由を簡単に説明するなら、はっきりと根拠となるような対照実験を十分に行うことができなかったから、ということになります。つまり、コレステロール摂取による心血管疾患の発症リスクの増加は、個人差が大きすぎるという判断がなされたからです。

というのも、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値の増減は、食事からばかりではなく、飲酒や喫煙、受動喫煙、運動、食塩摂取など、あまりにもいろいろなファクターと関係しているからです。食事によるコレステロール摂取だけがLDLコレステロールの増加の原因とならない以上、食事によるコレステロール摂取が心血管疾患の発症リスクを高めるファクターであると断じることはできない・・・という判断を、ACCとAHAは下し、日本の厚生労働省もそれに倣うような方向に傾きつつあるというのが実際のところです。

ということで、繰り返しになりますが、今回の改定はあくまでもロジックとして矛盾を生じないための措置であって、私たちが引き続きコレステロール摂取に対する警戒やコントロールをする必要があるということについては、ほぼ変更がないと解釈していただいたほうがずっと安全なのです。

これまでと同様のスタンスで、心血管疾患の発症リスクを軽減するよう、食事をはじめ運動習慣の強化や禁煙、禁酒など、いろいろな方法による生活習慣の改善をしていただきたいと思います。

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