一般論ではなく個が大事!がん遺伝子情報を生かした個別化治療!

生活習慣病の症状、予防方法、治療方法、データを知り、生活習慣病と向き合いましょう!
    

遺伝子診療の導入によりがん治療が変わる!

これまでの医療のベースとなっているのは、個人ではなく病気のほうでした。どういうことかというと、たとえば糖尿病であればインスリン注射をして血糖値を下げる、高血圧なら徹底的に塩分をカットするようアドバイスするといった、いわばマニュアルにのっとった治療が病気ごとに行われることになる、ということです。

同じ生活習慣病の一種であるがん治療でも、似たようなところがありました。たとえばがん細胞を摘出する手術を行う、放射線治療を行う、抗がん剤を投与するといった、がんという病気に対する対応がメインの治療でした。

しかしご存知のとおり、がんのような重篤な病気を発症すると、部位によってはかなりの高い確率で死に至るという現状は昔と変わっていません。それだけに、私たち一般人からすると、がんに対する恐怖心は一向にぬぐうことができません。

そこで近年新たに導入の方向で話が進んでいるのが、遺伝子診療と呼ばれる手法です。これは、がんという病気の治療のマニュアルはほぼ無関係であるといえる診療の手法になります。あくまでもがん患者の遺伝子情報をベースとし、がん治療の方向性を決めていこうというのが、遺伝子治療の大まかな狙いになります。

がんの個別化治療の実現へ

遺伝子診療によるがんの対策は、大きく2つに分かれます。予防というアプローチと治療というアプローチです。予防のアプローチを個別化予防、治療のアプローチを個別化治療と呼びます。

がんという病気は、確かに生活習慣病であると解釈される側面は大きいですが、ただ、遺伝子異常や遺伝子の破壊など、通常では考えられない事態が突然起こることで発症します。ですから、もちろんがん治療という従来の治療方法は有効ではありますが、それだけでは不十分であり、結果的にがんは未だ死を呼ぶ病気としておそれられているのです。ところが、個別化予防、個別化治療といった遺伝子診療を導入することによって、がんの発症リスクを低下させ、より有効ながん治療を行うことができるようになるのです。

もしがんの個別化治療が現在のがん治療の現場に導入することができるとすると、今後のがん治療は飛躍的な進化を遂げるはずです。しかし実際には、個別化治療の実現には至っていません。近い将来、必ずがんの個別化治療ががんの日常診療に導入されることになるとは思います。ただ、現状はまだ個別化治療の導入にあたり、いろいろな問題が解決できずにいるため、未だ個別化治療の日常心療への導入は実現していません。

それではいったい、こんなに先進的な医療の導入を実現できない問題とはどういったものなのでしょうか?

個別化治療にまつわる問題点について

遺伝子診療における個別化予防に関しては、ほぼ日常診療への導入が現実的になってきたと考えられています。おそらく今後、個別化予防の導入によって、がん予防のレベルは飛躍的に上昇することになるでしょう。しかし、個別化治療の日常診療への導入は、まだ現実的なヴィジョンが描かれていないというのが実際のところです。

個別化治療の日常診療への導入の妨げになっているファクターがいくつかあります。たとえば、検査の品質管理の体制が確立していないことが挙げられます。また、遺伝子解析情報の臨床的意義づけがまだ完全に行われたとは言えない部分があります。加えて、がん患者に対してどのような伝達をすべきかということについても、さらに煮詰める必要があります。もちろん個人情報の扱いについてもすべての問題がクリアできたわけではありません。

このような問題点がすべてクリアできてから、個別化治療の日常診療への導入がいよいよ現実的になると考えなければなりません。

ただし、遺伝子診療に必要な技術面は、従来にくらべて格段の進化を遂げていることは間違いありません。遺伝子解析技術の進化により、治療標的となるがんの遺伝子異常がかなりの高い確率で発見できるというレベルに、現状ですでに達しているのです。ですから、あとは個別化治療の技術というよりは、その受け皿をいかに大きくしていくかというところが、主な課題となっているのです。

がん遺伝子検査の現状

従来にくらべて飛躍的な技術の進化が見られるというお話をしてきましたが、それでは、具体的にどういうレベルの進化であるのかということについても、簡単に触れておきます。

2015年12月、国立がん研究センターは、がん検査の手法に関するセンセーショナルな発表を行いました。この発表によると、ごく微量(約5mL)の血液を採取するだけで、実に60種類にもおよぶがん関連の遺伝子異常の検査を、一度に行うことができるような技術の開発に成功した・・・というものでした。

すでにご承知かとは思いますが、従来であれば、切開してがん組織を切除し、詳細を検査する方法を採用していました。その技術がかなり進んだ結果、内視鏡検査という手法が実現しましたが、これもやはりがん組織を切り取るという外科的手法に頼っていることに変わりはありませんでした。

しかし、国立がん研究センターが発表した新たな技術を駆使することで、かなり高いレベルのがん検査が、わずかな血液採収のみという負担で実施できるようになるのです。このような技術開発の成功の背景には、上記でお話した遺伝子情報の解析(ゲノム解析)の技術が大きく関係しています。この分野は、日本の医療は世界のトップを走っているといっても過言ではありません。

この新しい技術開発は、最も発症死亡率が高いといわれるすい臓がんの発症メカニズムに着目することがきっかけとなって成功しました。しかしこの技術は、すい臓がんのみならず、乳がん、肺がんといった主要ながんのほぼすべてに対応しているといえます。加えて、薬剤耐性獲得変位の問題もクリアできますし、生体検査が不可能もしくは困難な患者に対しても負担を最小限に抑えることができます。

このように、従来では到底実現できなかったがん検査の手法も、いよいよ実用化を目指す段階にこれからステップアップしていくことになります。これでもし個別化治療の日常診療への導入が実現すれば、日本のがん医療の進化は従来では考えられないレベルの治療が実現されることになるのです。

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